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2005年 07月 16日
「カストラート」とは、18世紀を中心に実在したオペラ歌手たちのこと。男性なのだが幼少時に去勢されてしまう。すると、少年のままの高音と男性の力強さが合わさり、「オペラ歌手としては」まさに理想の肉体となる(もちろん今では廃止されている)。主人公は史上最も有名な伝説のカストラート、ファリネッリ(本名カルロ・ブロスキ、1705~1782)。その声域はなんと3オクターブあったと言われている。その歌声は聴く者を陶酔させ、失神までさせてしまう。物語はファリネッリとその兄で作曲家のリカルド・ブロスキ、ファリネッリの師と対立する作曲家のヘンデル(と数多くの女性たち)を軸に展開する。
兄リカルドの書いたオペラを歌い、ヨーロッパ中でとてつもない成功を収めるファリネッリ。兄弟で一緒に数多くの女性も愛し、まさに華麗な日々を送る。しかし、兄の書く大衆迎合的で凡庸なオペラにいつしか不満を抱くようになっていた。そんな中、ヘンデルのオペラをファリネッリの恋人が盗み出してくる。そのヘンデルのオペラを歌うことを決意するファリネッリ。そして彼はそれも神のような歌声で成功させる。しかしそれは、兄弟の関係の終わりを意味していた・・・・・・。 去年、たまたまとっていた音楽(声楽史)という授業で、たまたま1回だけ出席した時にちょっと見たので、今回全編を見ることにした。ところで、私は声楽に関する知識が全くない(あれ?)ので、物語の歴史的背景はわからなかった。それはとても残念なことだと思った。知っていればもっと楽しめていただろう。しかし、オペラに集中せずに本を読んでいた貴婦人をファリネッリが歌声で失神させてしまうシーンなどは、正直見ていて鳥肌が立った。 物語中に一番考えさせられたのは、ファリネッリはカストラートであることに苦悩し葛藤していたことである。彼は歌手として究極の肉体を手にしていた。だがそれは、遺伝子を残す生物としての自分と引き換えであった。彼は多くの女性から求愛される一方、「カストラートめ!」と蔑まれたりもしていた。彼はさしずめ、孤独なピエロのような存在であったのではあるまいか。 最後に、物語とは直接関係ないが、なぜカストラートのような存在をローマ・カトリック教会は許していたのか、純粋に気になった。いまでこそ、性転換はおろか妊娠中絶まで許すまじとしている教会は、彼らを宗教音楽に利用していたという。その意図にたえうるだけの美しい歌声であったのであろうことは、この映画で十分感じ取れた。
by morimoo
| 2005-07-16 02:06
| 映画
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